マッチが(残ってい)ないジャズ喫茶(8)

吉祥寺

赤いからす
吉祥寺に1977年3月に出来た店だというからもう27年にもなる老舗だ。もっとも今の場所に移ったのは1982年なのだそうでそれでももう22年になる。
エレベーターホールには店の名前をあしらった門と看板柱があって、この奥が店だと誘っている。
門の頭上にはWelcome 赤いからすの文字があり、その奥に鉄格子のように見えるのが扉だ。 はじめてきたわけだから扉を開けるのはちょっとどきどきする瞬間だ。
店の壁にはこの店を作ったが1999年に亡くなった松本啓司さんの写真(と思われる)が飾ってある。
本日のライブは女性ばかりのアルトサックスクァルテットだ。 最初はGreen Dolphin Streetでまだ何の曲か分からないピアノの長いイントロに続いてアフロリズムでおなじみのテーマ。 そこから4ビートに変わるが途中3度ほどキーを移調するところが新鮮だった。 次はIn a Sentimental Moodでここではベースが間を生かしたソロを聴かせた。 次は「夜は千の目を持つ」。ピアノソロはメロディーラインを聞かせるというタイプではなくサウンドとフレーズの断片を繋ぎ合わせてといった感じか。 最後はアルトが好きなレニートリスターノ(クールジャズの親分のようなピアニストでビルエバンスも影響を受けたという人だが一般的人気は無くレコーディングも少ない)がこの曲を下敷きにした曲を作ったというIndianaでアップテンポだ。アルトのメロディーラインはポールデスモンドをモダンにしたような感じ。 ベースはチャーリーへイドン風。ドラムがスタンレビー風というのが変わったバランスになっている。 ピアノ、アルトの2人は誰かに似ているというところがなく、さすがはプロだね。 写真はピンボケだけど。

Webサイトもあり、ここにはこの店の歴史のページがあり冒頭の部分はここから知った情報だ。 (2004年6月) 
残念ながら2008年3月に閉店した

横浜/
中山

Left Horse

横浜線中山駅を東に下りて30秒のビルの地下にこの店が有る。
道路に置かれた看板に店の名前を見つけると、やあ、有った有ったと嬉しくなる。階段を下りると店の外壁にも右のような看板が出ている。 それにしても将棋の駒はなんだろう。 桂馬なのだろうか?
入り口は普通の喫茶店のようなガラス戸で、中は結構広い。 入って左のスペースがライブスペースだ。 飲み物を置くコースターも将棋の駒状になっているからやはり桂馬か?
本日のバンドはフルート、ピアノ、ベースというトリオでスタンダードを聞かせてくれた。 写真でも分かるように前のテーブルは空いていて、観客は私を含めて2人だったけど、手を抜くことなく演奏してくれたのだった。
Webサイトもあり、ライブスケジュールが確認できる。

(2003年9月) 

→2009年1月に閉店

瑞江

Regina
東京江戸川区の都営新宿線瑞江駅にジャズの店があるという情報はJazzNaviというポータルサイトで発見したが、Webサイトはなく住所を頼りに探していったのだった。 駅から5分ほど、住宅街の真ん中の1階は美容室の2階にその店はあった。
ジャズという表示はどこにもないので恐る恐る2階に上がって普通の喫茶店という風情のドアをあけて中に入ると、ちゃんと気持ちよくジャズが流れている。店内の風情も普通の喫茶店だがなんと言ってもスピーカーが凄い。 大きな音ではないけれど輪郭がくっきりとした音で心地よい。
カウンターの前にはちゃんとガラスで仕切られたレコードルームがあり、右端には天井まで真空管アンプが並んでいる。 液晶ディスプレイがあり、ガラスの仕切りの外から赤外線のキーボードとマウスで操作できるようになっている。 マスターがそのマウスを操作して曲目を変えたようなので、「音源はPCなんですか?」と聞いてみた。それまでコーヒーを淹れてから沈黙していたマスターが話し出して止まらなくなってしまったのだった。
「そうなんですよ、一人でやっているもんだから、昼時などお客が立て込むと曲が止まってしまうから、PCで流すことを思いついたんです」と。 Windows Media Playerに沢山の曲が登録されていて、次々に流れているようだ。 ところで液晶ディスプレイの後ろの紫のタワー状のものはなんですか? これはCPUのクーリングタワーです。このPCは自作で、180GBのディスクを3台束ねて、鋳物のケースに入れて締めてあるからノイズなど全く問題ありません??? 普通はオーディオではアースを1箇所にするのですが、コンピュータでは出来るだけ近いところに落としますから、このマザーボードも8点アースにしてあり、サウンドカードのアナログケーブルもシールド付の物に変えてあるから全くノイズがないでしょう?
このスピーカはアルテックなんですがジャズ喫茶によく使われているA7というのはこのぐらいの小さいスペースだと箱鳴りがするんです。アレはもともと劇場用だから。 だからこのエンクロージャは手作りです。だけどこのセットに合うトゥイータがなくて、いろいろ買って試してみたけどダメでここにあるのは作らせたのです。 私は昔オーディオメーカーで設計をしていたので、今回も図面を書いて材質と構造を指定しました。 前のラッパ部分の角度を65度、70度、75度、80度と4種類作らせて試したところ80度のが良いことが分かりこれはそれなんです。 1個18万円だからそれだけで150万近く使っているんです。
  「レコードプレイヤーはトーレンスですか」などと知ったかぶりしたら、これはガラードです。 (オウそうだったか。 2台がレコード室にあり、もう一台は時計となってスピーカーの上の壁に掛かっている。 このガラードというのは二つ欠点があるのです。 といってレコード室から持ってきてくれたのはレコードプレイヤーの軸部分。 これがガラードの純正の軸です。廻してしてみてください。 グルグル。これが私が改良した軸です。 クルクル。確かにこちらのほうが軽くてスムーズだ。これがガラードの軸を受けている部品です。 こちらが私が改良したものでこれはルビーなのです。 だからスムーズなのか。 もう製造中止の機械だから全国から直してくれという依頼があるんです。だから部品を買い占めてあるのです。 へえーー。 もう一つの欠点はプーリー(モーターの回転をターンテーブルに伝えるゴムの円盤)が硬くなることです。 ナルホド。

 今掛かっているこの曲の音源はレコードですけどプチプチいわないでしょ。Bill Evans TrioのJade Visionが掛かったがたしかにレコード特有のホコリ音がしない。 これはね。 フムフム。 昔ダイヤモンドの輸入をしていたことがあって。 エエーそうなんですか。 ダイヤモンドを触ると手の油などがつくので特殊な布で拭くのです。 そうだこれをレコードに使えばと思いついて、高分子の布を作らせました。 これです。 これでレコードをこのように拭くとほらこのとおりホコリが取れるのです。 あまり拭いてないレコードだとここに黒い筋が着くほどです。 いまこの布に霧吹きでかけたのはオゾン水なんです。 ホオー。 オゾンは殺菌力が強いのでこうして拭くとカビなんか一切生えません。 実は下の美容室は女房がやっていてそこで使っていたオゾン水発生装置が故障したんです。 これは百万以上するので、それではと、いろいろ調べました。インターネットでも調べたけど肝心のことは載ってないのです。 ほらこれがオゾン発生チップで、水のポンプも熱帯魚の水槽に使うものだと力がちょっと弱いので工夫しました。 結局材料費だけで10万ぐらいで出来たんです。 ホッホー。 これを売っているわけではないけどいくつか作ってあげたものの修理はしないといけないのでチップを買ってあるんです。一時秋葉原で店頭からこのチップが無くなったことがあってあせりましたが、そのときは洗濯機にオゾン力を使ったものが出たときだったんです。  トイレの手前の棚においてあるのは今までいろいろ作ったオーディオ機材です。 MC型カートリッジ(moving coil)のトランスにノイズが乗るといった人が居ましたが、そんなものはこのように鋳物の入れ物に入れてしまえば大丈夫なのです。 (オ、重い。1辺5cmぐらいのトランスを1辺20cmの鋳物で覆ってあるから10kgぐらいするのだ)。 まあ、いろいろ買ったり作ったりしましたね。 息子が3人いるのですが、それぞれ私のお下がりの装置を使っているから、それはもう凄いもんですよ。ウラヤマシー。
 その布を譲ってもらえませんか? いいですよ。ついでにオゾン水も差し上げます。 但しこれはすぐ抜けてしまいますから、せいぜい2、3日しか持ちませんが。 と、初めは1時間ぐらいのつもりが3時間ぐらいもジャズとマスターの話を楽しんだのだった。 まだまだびっくりするような話が飛び出しそうだったから、また今度行きたいものだが、チト遠いのが難点だね。
 早速家に帰って試してみたら、これが本当にホコリが取れて快適なので、翌日は久々にレコードばかり聴いていたのだった。 (2004年9月) 

原宿

ボロンテール

原宿の南口から表参道を東へ明治通りにぶつかったら渋谷方面に少し行った右側道路沿いにあるこのボロンテールは昼間は喫茶店、夜はジャズバー
になる。 狭い三角地に店はあり、渋谷寄りの三角の先端の階段で2階に上がる。階段の途中にJazz&Coffeeの嬉しい看板があり、入り口の右のデカイレコードの看板も嬉しい。
ドアを押して中に入るとカウンターのみの店内に、使い込んだレコードがぎっしりと詰まっている。右の写真では分かりにくいが入り口の上にブックシェルフ型スピーカーがあるのだ。
カウンターの後ろの柱に棒が刺さっているのは実は梯子で、三階に寝泊り出来るスペースがあるらしい。忍者屋敷みたいだが、その昔この建物のオーナーがそこに住んでいたとのこと。 奥の壁にはジャズイラストが沢山飾ってあるが良くみると有名なイラストレーターのものだから凄い。 その床には下の写真の格子がある。
これはなんだろうとママさんに聞いてみると昔入り口が明治通り側にもあり、その階段だったのを塞いであるのだという。 実は明治通りは今地下鉄工事中であり、邪魔になるから塞げということだったらしい。 時々レコードの針が飛ぶほどの振動が来ることもあるので、早く工事が終わってほしいのだ。
後で1階から見てみると明治通り側の階段はシャッターが閉じており、看板はあるものの、渋谷側に廻るように張り紙がしてあるのだった。 店のカードは和田誠さんのレスターヤングのイラストがかっこいいものだ。(2003/9)

赤坂に移転した

神戸

葱焼倶楽部
JR神戸駅から歩いて、そうさなあ5分か、高速神戸駅から1分、湊川神社のすぐ横にこの店はある。
湊川神社の前の大通りに面してこの看板が出ているのですぐ分かる。「ねぎやき with Jazz」と書いてある。 地下の店に下りる階段の壁には更に雰囲気のある右の看板が出ている。 ボードには本日のライブのお知らせが貼ってある。
階段を下りていくと前にも看板があり、下に入り口が見える。 時間がちょっと早かったが、本日のライブのギタリストがリハーサル中だった。
左は店内にあるガラス照明のコレクション。壁掛け時計のコレクションもある。これらは店のWebページに掲載されている。 さてここのメニューは売り物の葱焼き(お好み焼きのキャベツの替わりに葱の細かく刻んだのが入っているもの。下の写真の左側)とお好み焼き(写真の右側)。 両方注文して食べ比べてみた。 お好み焼きも旨いが、それほどオリジナリティが出しにくいから普通の旨さとすると、葱焼きは実に旨い。 葱を焼いた甘みが出ていて抜群だった。 チーズと餅が入ったものを頼んだのだったが、他の具のものも食べてみたかったなあ。
しばらくするとギタリストの知り合いらしいお客さんが続々詰め掛けて上の写真の前方の席が殆ど埋まったのだった。 楽しい雰囲気でいいなあ。 (2004/7)

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